R08-4

新型広帯域大気電場測定機器の実証実験

Demonstration experiment of new type wide band electric field-mill

 

氏名・所属

工藤剛史 Takeshi Kudo (音羽電機工業株式会社 Otowa Electric Co., LTD.)

 

共同研究者氏名・所属

鴨川仁・静岡県立大学 (Masashi Kamogawa,・University of Shizuoka)

 

 

研究結果(プロジェクト報告)の概要

 

雷活動の危険性を事前に判断するためには、雷放電発生前の大気電場等の情報を得る必要がある。一般的に大気電場の計測には、回転型フィールドミル(以下、フィールドミル)が用いられる。晴天静穏時の地表大気電場強度は約100 V/m程度と微弱であるが、襲雷時には10 kV/m以上に達するため、ワイドレンジに測定できる必要がある。従来のフィールドミルで、サチュレーションを起こすことなくこの問題に対応するには、感度の異なる複数台のフィールドミルによる同時測定が必要であった。そこで我々は、1台のセンサーのみでワイドレンジ計測ができるフィールドミルを共同開発した。気象条件の厳しい富士山頂は、夏期に数度雷雲内に入ることがあるため、過酷環境下で安定して、サチュレーションを起こすことなく大気電場を計測できることを検証するのに適する場所である。そこで、1号庁舎の屋上にフィールドミルを1台設置し、大気電場の連続観測を実施した。

 

1号庁舎屋上に単管パイプで固定してフィールドミルのセンサー部を固定した。建物内部にデータロガー機能を有するデータ受信部を設置し、電源とデータ受信ケーブルをインレットに通して配線した。セットアップが完了した7月13日から撤去する8月23日までの間、周辺への落雷と台風接近による停電を除いて、安定してデータを取得できたことを確認した。図1に7月に計測した大気電場強度の時間変化を示し、図2に8月の同変化を示す。グラフの縦軸は電場強度を示し、強度の範囲は±100kV/m(50kV/m毎に補助線)である。7月23日の午前1:30頃に富士山頂周辺に落雷が発生したが、フィールドミルはサチュレーションすることなくデータを取得することができた(図3)。平面校正前のデータではあるが、電場強度の絶対値は100kV/mを超えていた。GPSの1秒ごとのパルス信号についても安定して取得できていることが確認できた。これにより、気象データや放射線データ、雷電流データ等との比較による詳細なデータ解析が可能になった。

 

図1 2019年7月に計測した大気電場強度の時間変化

図3 2019年7月23日午前0-2時の大気電場強度の時間変化

図2 2019年8月に計測した大気電場強度の時間変化