旧富士山測候所への高速度上山時におけるパルスオキシメータによるモニタリング結果

 

 

前田源次郎

 

1.はじめに

旧富士山測候所のトライアル利用をチャレンジするにあたりブルドーザーでの上山をおこなうこととなりかつてない高速度での移動であることからトライアルで使用する予定であったパルスオキシメータ(Shenzhen Jumper Medical Equipment Co. Ltd.製 、JPD-500D)を用い心拍数、酸素飽度、灌流指数のモニタリングを急きょおこなった。

本稿においては上山の状況ならびにモニタリング結果について報告するものである。

 

2.旧富士山測候所への高速度上山時の状況

2019年8月18日、6時に太郎坊拠点を出発し上山を開始した。当日の天候は、薄曇りから小雨、晴れ、霧、晴れと移り変わり、車内に吹き付ける風の強さも大きく変わった。モニタリングは、JPD-500Dを右人差し指に装着してブルドーザーが地図で後日に標高を確認可能な地点を通過する際に酸素飽和度、灌流指数、脈拍数を読み取り事前に用意した記録用紙に記入した。

気象庁中継小屋から馬の背直下までの間は、激しい振動のためメモが取れなかったのとメータから出る音がオペレーターの支障にならないように電源を切ったためこの区間もNDとなった。高速度上山の状況ならびモニタリング結果を表2-1に示す。また記録した結果をグラフにしたものを図2-1、図2-2に示す。

 

日にち 時間 標高 酸素飽和度 灌流指数 脈拍数 地点名

8月17日 22:25 77 99 8.6 73 自宅

8月18日 16:00 440 98 7.2 79 御殿場観測サイト

8月18日 17:00 440 ND      ND ND 御殿場観測サイト

8月18日 18:00 440 98 4.7 77 御殿場観測サイト

8月18日 19:00 440 98 7.4 76 御殿場観測サイト

8月18日 20:00 440 ND ND ND 御殿場観測サイト

8月18日 21:00 440   ND     ND ND 御殿場観測サイト

 

 

表2-1-1 酸素飽和度、灌流指数、脈拍数のモニタリング結果(上山開始前)

※トライアル利用時に使用予定であった反射時間の測定はしていたが、この時に酸素飽和度などの測定は失念していたのでNDとなった。エクセルからの貼り付けの関係でそのまま載せる。

 

日にち 時間 標高 酸素 飽和度 灌流指数 脈拍数 地点名

8月19日 6:00 1300 93 2.9 84 太郎坊観測サイト

8月19日 6:35 1480 96 9.8 75 大石茶屋

8月19日 7:02 2830 96 4.5 68 旧4合目

8月19日 6:52 1900 93 9.5 68 次郎坊

8月19日 7:26 2892 90 7.3 82 旧六合目小屋跡

8月19日 8:02 3133 94 4.5 89 七合目下山道交点

8月19日 8:15 3300 89 2.5 80 気象庁中継小屋

8月19日 9:00 3725 ND ND ND 馬の背直下

8月19日 10:00 3776 80 1.9 111 旧富士山測候所

8月19日 11:00 3776 61 ND ND 旧富士山測候所

表2-1-2 酸素飽和度、灌流指数、脈拍数のモニタリング結果(上山開始から終了)

※気象庁中継小屋付近でトイレ休憩をしたが、心拍数の低下はそのためと思われる。

 

3.モニタリングを振り返って(紙面の関係で2.の図表の間に記載する。)

今回は、限られた時間と資金で準備をしなければならなかったのと不慣れであったこともあり前日夜の御殿場観測サイトと当日の上山途中でのモニタリングデータが一部得られていないなど不備も多かったが高速度での上山による身体の反応をおぼろげながらでも記録できたのは大きな収穫であった。激しい振動下で移動中に酸素飽和度や灌流指数、脈拍数を確実に記録するためには

手書きではなく何らかの形で電磁気的に記録する機材を確保しなければならないが可能であれば挑戦したいと思う。

またこのようなモニタリングをするにあたっては位置情報(緯度、経度、高度)の取得・記録も必要となるがこれらの情報を得るのに前述と同様に激しい振動下でも確実に動作可能であることが求められるのでこれらについて検討していきたいと考えている。

本来の目的であった自作装置による反射神経の計測は、測候所到着後におこなったメータでの計測結果酸素飽和度が非常に下がっていることが分かり大事を取り当日のうちに徒歩で下山したためできなかったが下山後に自宅で使用したところ正常に作動したので富士山頂へブルドーザーで輸送しても壊れない物を作るという目標は達成できたことを合わせて報告したい。

 

4.謝辞

今回のトライアル利用に際して協力をしていただきました認定NPO法人富士山測候所を活用する会の関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 


図2‐1 酸素飽和度、灌流指数、脈拍数のモニタリング結果

(上山開始前)

※トライアル利用時に使用予定であった反射時間の測定はしていたが、この時に酸素飽和度などの測定は失念していたのでNDとなった。エクセルからの貼り付けの関係でそのまま載せる。

図2‐2 酸素飽和度、灌流指数、脈拍数のモニタリング結果(上山開始から終了)

※気象庁中継小屋付近でトイレ休憩をしたが、心拍数の低下はそのためと思われる。