井出里香 Rika
Ide
東京都立大塚病院 耳鼻咽喉科 Department of Otorhinolaryngology, Tokyo Metropolitan Otsuka
Hospital
共同研究者氏名・所属
高木祐介
奈良教育大学教育学部 保健体育講座
Department of Health and Sports Science Education, Faculty of Education, Nara University of Education
関和俊
流通科学大学 University of Marketing and Distribution Science
油井 直子
聖マリアンナ医科大学スポーツ医学講座 Department of Sports Medicine, St. Marianna University School of Medicine
急性高山病の症状にはめまい・ふらつきがあり、高所(低圧低酸素)でのふらつきは滑落事故の要因にもなっている。
今回は20代の健常男性6名を対象として、重心動揺計を用いて、平地および富士山5合目(富士山2400m)、山頂(3776m)でふらつきの程度を測定した。
重心動揺検査(静止時)では各地点での閉眼時の総軌跡長(ふらつきの程度)に有意差は認めず、ラバー負荷(前庭機能の簡易評価)もほとんど変化がみられなかった。体幹2点歩行動揺計(歩行時)では上半身のふらつきが大きく(登山時<下山時)、登山前後の平地でのふらつきは同程度であることから、下腿筋疲労などの影響より、高度による影響の方が大きいと思われた。
登山中のふらつきの簡易評価法として、ファンクショナル・リーチテスト、片足立ちおよび主観的なふらつき感による評価も同時に測定した。ファンクショナル・リーチテストは、標高の上昇とともに、低下する可能性が考えられた。しかしながら、片足立ちについては、大きな変化はみられなかった。主観的なふらつき感は、上り時において標高の上昇とともに有意な増加を示したが、頂上での宿泊後は低下した。臨床現場で用いられる指標(重心動揺等)、簡易的指標(ファンクショナル・リーチ等)及び主観的な指標とも、少なからず気圧変化を伴う登山運動による影響を受け、測定値は地点によって顕著に変動した。
今後、これらの大量データについて、焦点を絞って解析し、指標変化に影響を及ぼした要因について詳細に検討する必要性があるものと考えられた。