富士山頂における一酸化炭素、オゾン、二酸化硫黄の夏季の長期測定  (*2017年度新技術振興渡辺記念会受託事業)

Long term observation of carbon monoxide, ozone, and sulfur dioxide during summer at the summit of Ft. Fuji


加藤俊吾 Shungo KATO

首都大学東京   Tokyo Metropolitan University

 

【研究成果の概要】

 富士山頂において2017715日~823日にかけて大気中の一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)、二酸化硫黄(SO2)の連続測定を行った。COは車の排気ガスや工場など燃焼により発生するため、汚染大気が上空の富士山頂に輸送されてきている指標となる。O3は汚染大気が日射により化学反応を起こすことで生成し、高濃度になると植物や人体に悪影響を及ぼす。日本の中心付近に位置する富士山頂でこれらの濃度を把握しておくことは重要である。

 SO2は石炭などの燃焼や火山活動から放出される。720日に高濃度のピークが観測されたが、CO濃度変動や空気の輸送方向を考えると浅間山からの噴煙の影響をうけていた可能性が高い。

 富士山頂では夏季しか商用電源が利用できない。そのため越冬観測を行うには小電力の測器が必要になる。大気微量成分を測定できる消費電力が少ない化学センサーを用いて比較測定のテストを行った。富士山頂のような清浄な大気においてもCO,O3についておおよその濃度変動をとらえることが確認できた。

 

  Atmospheric CO, O3, and SO2 were observed at the summit of Mt. Fuji during summer in 2017.

  SO2 increase was observed on July 20, probably influenced by volcanic activity at Asama volcano.

  Low electric power sensors for trace gases measurement were tested for winter observation, no electric power (only battery and solar panel available).

 

【研究成果の公表予定】

 ACPM2017, データ検討会、NPO成果報告会、 大気環境学会などで結果の報告を予定

 

 富士山頂での2017720日の二酸化硫黄(SO2)濃度異常値について

 

1に示すように、SO2濃度は午前7時ごろから9時ごろにかけて急上昇し、以後平常値に戻った。

同時に測定している一酸化炭素(CO)濃度はこのSO2濃度上昇時に連動した変動はみられなかった(図2)。

 

また、SO2高濃度時の後方流跡線(空気がどこを通って富士山頂にたどり着いたかを計算したもの)を図3に示す。

本州中央部を通過してきており、浅間山などから放出されている火山ガスの影響を受けている可能性が高い。中国北部も通過しているためSO2を多く放出す石炭燃焼の影響もありえるが、COが同時に高濃度となっていないことから石炭燃焼の影響ではないと判断できる。

 

 

 

図1 720日のSO2濃度測定結果

 

図2 720日のCO濃度測定結果

 

     図3 SO2高濃度時の後方流跡線 (日本時間7208時、海抜3776m)