氏名 鴨川 仁 / Masashi KAMOGAWA
所属 東京学芸大学 / Tokyo Gakugei University
共同研究者氏名・所属
鈴木智幸 東京学芸大学 tsuzuki@u-gakugei.ac.jp
安本勝 (株)アンテック myasumoto_2013@yahoo.co.jp
佐々木一哉 東海大学 k_sasaki@tokai-u.jp
David Smith, カリフォルニア州立大学 サンタクルーズ校, dsmith8@ucsc.edu
Gregory Bowers, カリフォルニア州立大学 サンタクルーズ校, gsbowers@ucsc.edu
研究結果の概要
富士山山頂という高所を活用し、雷に関連する諸現象の研究を行った。
1)雷活動において発生する高エネルギー放射線
雷活動や雷雲の挙動に同期した放射線の観測を行った。これらの放射線は、地殻由来の放射線、宇宙からやってくる放射線に次ぐ第3の放射線として注目を集めている。
雷活動や雷雲の挙動については、大気電場の値を測定し、その変化から推測した。大気電場は特にデータ欠損することなく7月16日から8月26日まで収録す ることができた。その結果、7月は比較的穏やかな天気であり雷活動は見られなかったが、8月には数日の雷活動による大気電場の変動が観測された。8月23 日には雷雲に同期した高エネルギー放射線の増加が見られた。(図1)
図1 雷雲活動に伴う放射線の変動
2)スプライトをはじめとする高高度大気中における放電現象
活発な雷放電に伴って、夏季の関東平野上空で発生するスプライト等の高高度放電現象(雷雲から上空に向かう放電現象)を観測し、微細構造の仕組みについて解明することを目的として、7月19日から8月26日まで観測を行った。
例年数イベントは取得できていたが、今年度は、関東平野上空で落雷活動が発生している時は、山頂が常に雲に覆われており目的を達成できなかった。
3)落雷対策と雷対策具体化のための接地系と部材間の接続状況の調査
富士山の落雷現象により測候所の山麓に繋がる接地線と避雷導線に流れる電流の測定と同時に測候所での落雷現象測定に相応しい測定系にするための洗練化も行った。
今年度は測候所への直撃雷は無かった。毎年観測される測候所周辺雷による接地線電流は、一部取れたものの誤設定、オフセット、等により適切に動作しなかったことで、データ欠損があった。またノイズ等による不要動作と推測されるものも認められた。測候所周辺雷によって接地線に流れる電流は、図2に示す測候所周辺の落雷による富士山注入電荷を測候所という集電電極に集めて流れるものと,図3に示す落雷電流路と接地線との電磁結合によって流れる電流になる。
測定系は、落雷現象を正確に捉えることができるように改良を進めている。
今年度は、昨年度直撃雷の前兆現象が細切れであったが、長時間測定記録を可能にし全体を取れるように改良した。しかし、今後の測定を考えるとデータ量が膨大になるため、データ処理の工夫が必要である。
昨年までの電流測定系はロゴウスキーコイル出力電圧を直ぐに積分回路を通すことで接地線電流を求めるようにしたが、今年は避雷針被雷電流測定を念頭に、測 定系はロゴウスキーコイル検出器と積分回路との間の距離が取れる方法にし、周辺雷用高感度ロゴウスキーコイル電流計は直撃雷電流が流れても破損しない保護 回路付とした。
今年度周辺雷用測定系に生じたデータ欠損と不要動作は、オフセットを小さくし、適切なトリガーレベルの設定にすることなどで改善が図られると考えている。さらにノイズよる原因は、磁界か電界の由来を明確にすることで測定系への適切な対策が可能になると考えている。
新たに用意した避雷針用ロゴウスキーコイル電流計は、避雷導線に設置したが、被雷は無く測定できていない。代わって電流計のゼロレベル付近に測候所内接地系統の循環電流と推測される変動が見られた。ノイズ対策上測候所内接地線循環電流も調査が必要であることが分かった。
山麓に繋がる接地線電流測定2系統と避雷導線電流測定系の計3系統の測定記録は、いずれもデジタルストレージオシロスコープの自動記録機能を用い上手く機能した。
図2 落雷電荷終電により流れる接地線電流
図3 落雷(負極性)放電路との電磁結合による接地線誘導路