登山行動中の血行動態の解明―マルチセンサー自由行動下24時間血圧計を用いた計測―

Ambulatory monitoring of hemodynamics during mountaineering

小森孝洋 Takahiro Komori
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 Department of Medicine, Division of Cardiovascular Medicine, Jichi Medical University School of Medicine


共同研究者氏名・所属
金澤英紀・自治医科大学
星出聡・自治医科大学
苅尾七臣・自治医科大学

 

研究成果の概要
目的:富士登山中の血圧変化を計測する。
方法:健常人4名を対象とし、富士登山開始~山頂滞在~下山にかけての全行動中にわたり、24時間血圧計を装着して血圧を測定する。行動中は酸素飽和度と高山病スコアの測定を行う。山頂の富士山測候所での宿泊中には就寝中の酸素飽和度も測定する。
結果:行動中は標高が高くなるにつれて酸素飽和度は低下し、心拍数が上昇した。行動中の血圧レベルは上昇していたが標高による影響はなかった。山頂到着後、安静中は血圧レベルは低下していた。就寝中は血圧レベルは低値であったが、酸素飽和度の低値(最低SpO2 40%台)を認めた。
 

図1に富士登山中の24時間血圧変動例を示す。登山行動中は血圧レベルが100mmHg前後で推移しているが、測候所滞在中は就寝しても血圧レベルの低下がみられていない。生理的な血圧日内変動が消失した状態である。


図2は富士山測候所滞在中の酸素飽和度の変化例を示す。就寝中にはSpO2 60%以下への低下が認められる。この低酸素が交感神経活性亢進を来たし、それによって生理的な血圧日内変動が高所滞在中に消失することが考えられる。
今後の展望:気温・気圧・活動量のデータ解析をさらに進め、登山行動中の血圧に影響を与える因子を特定する。さらに、平地での24時間血圧測定を現在実施している。今後、富士登山中と平地生活中の24時間血圧測定データの比較を行い、血圧変動性の違い、血圧レベルの違いを検討していく予定である。

  図1 富士登山中の24時間血圧変動例
  図1 富士登山中の24時間血圧変動例
  図2 富士山測候所滞在中の酸素飽和度の変化例
  図2 富士山測候所滞在中の酸素飽和度の変化例

研究成果の公表予定 
日本登山医学会学術集会にて発表予定